1987年に文化庁芸術祭賞を受賞した、高岡良樹の代表作品。佐渡島を舞台にトキの夫婦の愛を歌い語る名作です。
夫鳥を撃ち殺された妻鳥が、狩人の目の前で自らのくちばしで胸を突き破り、命を絶つという物語。
国際保護鳥であるトキの学名はニッポニア・ニッポン。まさに日本を象徴する鳥です。この作品は、絶滅寸前だったトキが再び日本の大空を羽ばたくよう祈りを込めて創作されました。そしてその祈りは届き、トキは再び佐渡で復活しました。
父の想いを受け継ぎ、再び日本の大空を多くのトキが羽ばたく日を願って、私は祈り歌います。
「河童、おしらさま、座敷わらし」と、岩手県遠野に伝わる昔っこ噺しを、組曲スタイルで東北弁を交えながら歌い語る作品です。
遠野は「日本のふるさと」とも言われています。忘れていた懐かしい日本の心を思い出させてくれる歌物語で、子供から大人まで幅広い層に人気があります。
この作品は遠野市立遠野小学校の子供たちに伝承され、1982年から全校表現活動「遠野の里の物語」として演じられています。
彼らの活動を目の当たりにして、私は父の歌物語を受け継ぐ決意をしました。
語っていると、どんどん童心に戻っていくよ
うな、不思議な魅力がある作品です。
広島の街に「笑い地蔵」と呼ばれるお地蔵さんがいました。しかし8月6日、広島に原子爆弾が投下された後、お地蔵さんは「おこりじぞう」と呼ばれるようになりました。
焼けただれ、水を求めてきた幼い女の子とお地蔵さんのお話。全国20万人以上の人達が聴いて下さっている名作です。戦争の記憶は決して忘れてはいけません。
私が受け継いでからも、毎年夏、多くのミュージシャンの方々の賛同をいただき「おこりじぞうコンサート」を開催しています。
今私が一番大切にしている作品であり、核廃絶の時代を願い、歌い語り続けていくべき歌物語だと思っています。
千葉常長は天女の御子也?
天から池田の里に降りてきた天女と殿様・千葉常将のラブストーリー。
羽衣伝説は全国にありますが、千葉の羽衣伝説は時の権力者が登場する珍しい物語です。千葉市を作った千葉氏の伝説。千葉氏と妙見信仰との関わりも語られています。
私の生まれ育った土地の物語。
歴史を知り、伝承する事の大切さを真に感じています。
父が私のために書き下ろしてくれた歌物語なのでは? と感じている作品です。
17年の歳月をかけて日本全国を測量し、正確無比な日本地図を完成させた伊能忠敬。出生から、えぞ地初測量における苦難のエリモ越えまで語ります。
伊能忠敬といえば、50歳で隠居してから本格的に天文暦学を学び始めた人物です。そのエピソードから、シルバー世代への応援歌として大変人気がある作品です。
「ひとたび男と生まれたなら、いのち燃やして生きよう、重い荷物を背負わねば、強い力は出ぬもの」
語るたび、私自身も勇気をもらいます。
時は慶応4年3月、官軍は江戸を総攻撃すべく江戸へ向かっていた。その時、徳川慶喜の命を受けて官軍の交渉権を持つ西郷隆盛の懐に飛び込み、必死の談判の末、江戸無血開城を確約させた山岡鉄舟。
その極貧の青春物語と鉄舟の生きざまを、講談・落語・俗曲などの江戸情緒と歌語りとをクロスオーバーして組み上げた、高岡後期の大作(57分)です。
語れば語るほど、知れば知るほど山岡鉄舟の人柄に惹かれていく。この作品を育てていく事は、歴史の真実を多くの方に知ってもらうためであると同時に、私の芸を深めていくことにも繋がっています。