高岡良樹が創作した物語音楽。「歌物語」は、音楽・文学・演劇が集約された新しい芸術ジャンルと言えるだろう。
日本の語り物芸能(琵琶法師・浄瑠璃)の伝統を引き継ぎながら、そこにジャズ・ポップス・フォークソングを独自にアレンジし、ドラマ性を加えて新しい世界を創り出したのだ。
ある時から彼は自ら吟遊詩人と名告った。
かって、世界の国々で町々村々を旅して譚歌(バラード)を吟じたこの道の先輩たちは、音楽家であると同時に宗教家であった。
貧困・没落・流離・離別などの苦に呻吟する人々をあえて取り上げ、その苦を自ら代弁諷誦することで、人々の傷ついた魂を暖めようとした伶人が多くいた。
高岡良樹も、弱き者・虐げられた者の叫びを真摯に受け止め、人間の優しさ暖かさを届けようとした。
そして動植物の魂にまで救済の声を届けたいと念じ、彼は物語音楽の源流を辿りゆく旅路を歌い生きた。それはまさしく正真の吟遊詩人である。
歌物語のサウンドは時代を先取りしすぎ、早すぎたという声も多い。いや違う、だからこそ今も色褪せないのだ。
未来へ伝えるべきメッセージが作品一つ一つにしっかりと込められている。
歌物語は、現代を生きる私たちの心にストレートに問いかけてくる。
潮見佳世乃「ものがたる」より
高岡良樹 RYOUJYU TAKAOKA
東京生まれ、1945年より千葉市に住む。
その後俳優を志し東宝芸能学校へ入学。
ベーシスト・ジャズシンガーを経て、1964年からシンガーソングライター活動を開始。
独自の「歌物語」と名付けた物語音楽を創作。音楽、文学、演劇が集約される芸術が開花する。
ジャズ、ポップスから邦楽まで歌う歌唱力で歌物語を表現し《日本の音楽芸能史に新たな世界を創造した》と評価される。
1987年、絶滅寸前の鳥をテーマに「朱鷺絶唱」を発表して文化庁芸術祭賞を受賞。
1988年、影絵劇団・かかし座との合同公演「おこりじぞう・かさこじぞう」が文化庁優秀舞台奨励公演に選ばれる。
1993年、高岡よしきを高岡りょうじゅに改名。
1996年、初出版の著書「吟遊詩人歌の旅」で第16回日本文芸大賞 エッセイ賞を受賞。
2000年、仏典の「般若心経」をフランス語訳と漢語訳で作曲・歌唱し、仏教歌手としても活動を始め仏教界からも称賛を受ける。
2018年 80歳没
代表作に「朱鷺絶唱」「おらと海」「三井寺の晩鐘」「遠野物語」「おこりじぞう」「浮舟」「伊能忠敬物語」「山岡鉄舟貧乏噺し」
「般若心経」フランス語訳と漢語訳 「さとりの花の芽吹き」法華経の如来寿量品の偈文を現代語訳
習志野市立実花小学校校歌・大網白里市立季美の森小学校校歌